手戻りのない一気通貫のモノづくり


2010年3月 264号発行:2010年3月1日
  • 巻頭言


    モノづくりの原点回帰
    片山盛光/関西IE協会副会長・(株)クボタ
  • 特集テーマのねらい(特集記事)


    手戻りのない一気通貫のモノづくり
    江頭誠/企画担当編集委員
  • 論壇(特集記事)


    一気通貫の設計・開発とそのベンチマーキング情報
    圓川隆夫/東京工業大学
    概要
  • ケース・スタディ(特集記事)


    開発プロセスの情報共有と知識再利用によるQCD改善の実現
    門脇一彦/ダイキン工業(株)
    概要
  • ケース・スタディ(特集記事)


    設計・製造連携した品質・コストの作り込み
    村岡良孝/富士通(株)
    概要
  • ケース・スタディ(特集記事)


    生産技術がリードする設計革新と生産革新の取り組み
    渡部信幸/富士ゼロックス(株)
    概要
  • ケース・スタディ(特集記事)


    電話応対記録の分析とその有効活用の仕組みづくり
    上田忠雄/TOTO(株)
    概要
  • プリズム(特集記事)


    部品情報流通基盤(R&R)
    古知屋寛/ロゼッタネットジャパン
    概要
  • プリズム(特集記事)


    設計手戻りを防止し 粗利を確保するための設計情報管理
    野本真輔/(株)構造計画研究所
    概要
  • プリズム(特集記事)


    統合BOMを核としたバリューチェーンの構築
    松原芳明/NEC
    概要
  • 連載講座


    生産システムの革命[Ⅳ]
    手島歩三/(特非)技術データ管理支援協会
  • 会社探訪


    111年の伝統と全員参加で取り組むものづくり -(株)加貫ローラ製作所-
    レポーター 皆川健多郎/大阪工業大学
  • 現場改善


    オペレータエンジニアを育成し全員参加の元気印工場を実現
    菅野克広/凸版印刷(株)
  • ビットバレーサロン


    改善活動の定着化(中)
    杉浦正邦/T・IE実践研究所
  • コラム(59)

  • 協会ニュース

  • 新刊紹介

  • 連携団体法人会員会社一覧

  • 編集後記

特集テーマのねらい


製造・保守・据付などの現場では、いろいろなロスが発生するが、それらは事前に配慮し計画レベルを上げておけば、未然に防げるケースが数多く存在する。このような事象への反省から、製品のライフサイクルを通して発生が予想される諸問題に対し、部門間の連携を強め、開発初期段階で十分に検討できる体制づくりを進めている企業が多い。また、モノづくりの原点となるお客様の声を先取りし、新商品企画に効率よく反映させている企業も多い。今回はそのような活動に着目し、上流である開発設計プロセスにおいて、市場情報を含めた現場起点の設計改善情報を元に事前に対策し、フロントローディング型設計の推進により、後工程でのロス発生や、業務手戻りを抑制していく改善活動について紹介していきたい。あわせて、上流で準備したデータや情報をうまく下流工程と共有化し、製品や業務プロセスの質をさらに向上させている事例についても紹介したい。以上のような背景から、本特集号はテーマを「手戻りのない一気通貫のモノづくり」とした。

テーマの骨子


本特集では、上記の問題意識に基づき、市場情報や製造情報を開発設計プロセスにうまく活用し、手戻りのない一気通貫のモノづくりを実現し、成果を上げている企業から、次のような観点で論文を執筆いただいた。
  • ・設計初期段階での品質・コストの作り込みと活動の定着化をどのように進めているか。
  • ・設計と現場との連携を、どのような仕組み・体制で進めているか。
  • ・お客様の声をどのように製品企画・開発に反映しているか。
  • ・部門間連携強化のため、どのようにコミュニケーションを図っているか。
  • ・フロントローディング化をサポートするツールの適用状況について。
  • ・具体的な改善成果について。
本誌を購読いただいている皆さんは、製品QCDの80%相当が設計段階で決まるということを経験的に理解していると思う。また、それが分かっていて実行できないことにジレンマを感じてもいるだろう。そのようななか、各論文から、一気通貫モノづくり体制の導入ポイントについて、有益な情報を見出していただければと考える。

記事について


  • 論壇


    今回の論壇は、一気通貫の設計・開発とそのベンチマーキング情報について、東京工業大学教授の圓川隆夫先生に執筆いただいた。「製品のQCDES作り込みを確保した上で、市場にタイムリーに投入できる新製品開発力こそが、企業の持続的成長のための必須条件であり、そのための要件が、手戻りのない一気通貫の設計・開発である。手戻りを避けるため、コンカレント・エンジニアリング、DfX、バラエティリダクション、フロントローディング型設計、そしてプロジェクトマネジメントが重要である」、「ツール・IT活用力を単に高めても意味はなく、開発戦略組織力を高めて、はじめて成長率が高まるという交互作用こそが高度化に有意である」と論述されている。また、開発の途中で、その方向性を妨げる部分最適な評価システムやマネジメント慣行があれば、それこそが阻害要因であり、正に敵は内部にありという指摘は重要なポイントと考える。本特集号の全体像が把握できる論文である。
  • ケース・スタディ


    • ①ダイキン工業の門脇氏には、開発プロセスの情報共有と知識再利用によるQCD改善の実現について説明いただいた。現場で作業できるという要件で、自社開発ソフト活用を導入し、知識・情報の再利用の取り組みを強化している。微妙で曖昧な知識も物理法則や因果関係を明示し、工夫次第で蓄積可能であること、また、不具合知識の構造化手法を広め全体活動へ展開するため、活動板を使った進捗の見える化や実行の担い手として、職場単位の小集団活動を活用しているところが参考となる。
    • ②富士通の村岡氏には、設計・製造連携した品質・コストの作り込みについて紹介いただいた。「仕組みやツールの充実も大切だが、DR/DFXを進める人づくりが重要である」、「設計と製造のより強固な連携を図るため、設計者に製造を経験させる」、「『大部屋開発』と称し、設計部門だけでなく、品質保証部門、製造部門、保守部門などの後工程のメンバーとともに、レビューできる体制をとっている」など、重要ポイントはツールの充実とともに、チームデザインと人づくりである。
    • ③富士ゼロックスの渡部氏からは、生産技術がリードする設計革新と生産革新の取り組みを執筆いただいた。変革のベースは、「生産技術工場で磨いた生産技術で得られた知見・技術のデータベース化、標準化」、「獲得したモノづくり技術を活用した製品開発へのフロントローディング化」である。プラスチック部品のQCDをコントロールするため社内に新規金型工場を設置し、金型技術や成形技術の内部取り込みを実施している。設備も生産技術工場で調整後、ユニーク部のみ量産工場へ転写という方式をとっており、マザー工場構築の思想が一貫化されている。
    • ④TOTOの上田氏からは、電話応対記録の分析とその有効活用の仕組みづくりを執筆いただいた。お客様の声をいかに商品の品揃えや新商品開発に反映させていくかについては、冒頭のドラッカーの引用「顧客が見、考え、信じ、欲するものこそ、…正面から真剣に受けとめるべき客観的な事実である」が印象的である。消費者自身から、率直な答えを得るというコンセプトが大切であること、また、難しいツールを使わなくても、手作業での応対記録活用で、ニーズをマイニングできるという点に注目したい。
  • プリズム


    • ①ロゼッタネットジャパンの古知屋氏からは、部品情報流通基盤について紹介いただいた。電子部品のグローバルSCM構築は、セットメーカー・部品メーカーの両者の課題を満たすべきものをめざしている。投資の少ない実施環境がメリットのひとつである。ただし、流通する情報(コンテンツ)の質、量、精度および鮮度の維持がポイントである。
    • ②構造計画研究所の野本氏からは、設計手戻りを防止し粗利を確保するための設計情報管理について執筆いただいた。手戻りを未然に防止するためには、お客様の要求を機能として表す言葉へ置き換えて、確認を円滑に正確に実施することが重要である。
    • ③NECの松原氏からは、統合BOMを核としたバリューチェーンの構築について説明いただいた。ITを活用して手戻りのない一気通貫のモノづくりを実現し、エンジニアリングチェーンを推進するためには、各BOMの個別最適化とマスタ情報の不一致を排除することや、BOM間の関連性を明確にし、仮想的に統合し管理することが重要である。
    以上8つの特集記事を見ると、手戻りのない一気通貫モノづくりについて、次のような共通点が認識される。
    • ①部門間連携の強化。
    • ②現場起点、顧客起点の発想で開発設計プロセスの改善推進。
    • ③部分最適から全体最適の取り組みへシフト。
    • ④IT化、標準技術化、ナレッジ体系化の強化。
    • ⑤プロジェクト進捗の見える化推進。振り返り分析の実施。
    • ⑥人材育成は仕組み維持継続のための必要条件。
    • ⑦当たり前のことを愚直に粘り強く進める行動習慣の醸成。
    部門間連携を強化し、手戻り削減・開発期間短縮を実現するために、あらためて経営の全体像を把握した機動性の高い生産技術者の必要性を痛感している。IEエンジニアをはじめ、生産技術者は、改善マインドを持ち、生産の前後工程についても理解が深い。現場情報を設計プロセスにフィードバックし、上流で形成された知識ベースをシームレスに下流へ流し込む改善活動への支援を生産技術者に期待したい。IE的センスを持ったエンジニアの粘りこそが、企業の競争力を高めることになる。今回の特集内容が皆様の業務遂行への刺激のひとつになればと願う次第である。
江頭 誠/企画担当編集委員

【論壇】一気通貫の設計・開発とそのベンチマーキング情報


今回の論壇は、一気通貫の設計・開発とそのベンチマーキング情報について、東京工業大学教授の圓川隆夫先生に執筆いただいた。「製品のQCDES作り込みを確保した上で、市場にタイムリーに投入できる新製品開発力こそが、企業の持続的成長のための必須条件であり、そのための要件が、手戻りのない一気通貫の設計・開発である。手戻りを避けるため、コンカレント・エンジニアリング、DfX、バラエティリダクション、フロントローディング型設計、そしてプロジェクトマネジメントが重要である」、「ツール・IT活用力を単に高めても意味はなく、開発戦略組織力を高めて、はじめて成長率が高まるという交互作用こそが高度化に有意である」と論述されている。また、開発の途中で、その方向性を妨げる部分最適な評価システムやマネジメント慣行があれば、それこそが阻害要因であり、正に敵は内部にありという指摘は重要なポイントと考える。本特集号の全体像が把握できる論文である。

【ケース・スタディ】開発プロセスの情報共有と知識再利用によるQCD改善の実現


ダイキン工業の門脇氏には、開発プロセスの情報共有と知識再利用によるQCD改善の実現について説明いただいた。現場で作業できるという要件で、自社開発ソフト活用を導入し、知識・情報の再利用の取り組みを強化している。微妙で曖昧な知識も物理法則や因果関係を明示し、工夫次第で蓄積可能であること、また、不具合知識の構造化手法を広め全体活動へ展開するため、活動板を使った進捗の見える化や実行の担い手として、職場単位の小集団活動を活用しているところが参考となる。

【ケース・スタディ】設計・製造連携した品質・コストの作り込み


富士通の村岡氏には、設計・製造連携した品質・コストの作り込みについて紹介いただいた。「仕組みやツールの充実も大切だが、DR/DFXを進める人づくりが重要である」、「設計と製造のより強固な連携を図るため、設計者に製造を経験させる」、「『大部屋開発』と称し、設計部門だけでなく、品質保証部門、製造部門、保守部門などの後工程のメンバーとともに、レビューできる体制をとっている」など、重要ポイントはツールの充実とともに、チームデザインと人づくりである。

【ケース・スタディ】生産技術がリードする設計革新と生産革新の取り組み


富士ゼロックスの渡部氏からは、生産技術がリードする設計革新と生産革新の取り組みを執筆いただいた。変革のベースは、「生産技術工場で磨いた生産技術で得られた知見・技術のデータベース化、標準化」、「獲得したモノづくり技術を活用した製品開発へのフロントローディング化」である。プラスチック部品のQCDをコントロールするため社内に新規金型工場を設置し、金型技術や成形技術の内部取り込みを実施している。設備も生産技術工場で調整後、ユニーク部のみ量産工場へ転写という方式をとっており、マザー工場構築の思想が一貫化されている。

【ケース・スタディ】電話応対記録の分析とその有効活用の仕組みづくり


TOTOの上田氏からは、電話応対記録の分析とその有効活用の仕組みづくりを執筆いただいた。お客様の声をいかに商品の品揃えや新商品開発に反映させていくかについては、冒頭のドラッカーの引用「顧客が見、考え、信じ、欲するものこそ、…正面から真剣に受けとめるべき客観的な事実である」が印象的である。消費者自身から、率直な答えを得るというコンセプトが大切であること、また、難しいツールを使わなくても、手作業での応対記録活用で、ニーズをマイニングできるという点に注目したい。

【プリズム】部品情報流通基盤(R&R)


ロゼッタネットジャパンの古知屋氏からは、部品情報流通基盤について紹介いただいた。電子部品のグローバルSCM構築は、セットメーカー・部品メーカーの両者の課題を満たすべきものをめざしている。投資の少ない実施環境がメリットのひとつである。ただし、流通する情報(コンテンツ)の質、量、精度および鮮度の維持がポイントである。

【プリズム】設計手戻りを防止し粗利を確保するための設計情報管理


構造計画研究所の野本氏からは、設計手戻りを防止し粗利を確保するための設計情報管理について執筆いただいた。手戻りを未然に防止するためには、お客様の要求を機能として表す言葉へ置き換えて、確認を円滑に正確に実施することが重要である。

【プリズム】統合BOMを核としたバリューチェーンの構築


NECの松原氏からは、統合BOMを核としたバリューチェーンの構築について説明いただいた。ITを活用して手戻りのない一気通貫のモノづくりを実現し、エンジニアリングチェーンを推進するためには、各BOMの個別最適化とマスタ情報の不一致を排除することや、BOM間の関連性を明確にし、仮想的に統合し管理することが重要である。