設備を活かす・設備に活かす


2013年5月 280号発行:2013年5月1日
  • 巻頭言


    モノづくりとイノベーションの融合に向けて
    小島啓二/日本IE協会副会長・(株)日立製作所
  • 特集テーマのねらい(特集記事)


    設備を活かす・設備に活かす
    戸田隆幸/企画担当編集委員
  • 論壇(特集記事)


    大量生産型設備からの脱皮
    中村善太郎/慶應義塾大学
    概要
  • ケース・スタディ(特集記事)


    ワークヘッドと良品条件からのもの造り
    山田昌也/マルヤス工業(株)
    概要
  • ケース・スタディ(特集記事)


    自主・自立・自前の設備製作活動推進
    大森守 渡辺祐一 黒澤勝/(株)ミツバ
    概要
  • ケース・スタディ(特集記事)


    T-501現場液面計指示異常の改善
    柳瑠里 田原ゆり 石川佳菜 辛山利恵/旭化成ケミカルズ(株)
    概要
  • ケース・スタディ(特集記事)


    磨け女子力!新たな視点で現場力アップ!
    山田紀男/新日鐵住金(株)
    概要
  • ケース・スタディ(特集記事)


    治具化・機械化・ライン化
    川手芳成/シチズン平和時計(株)
    概要
  • 連載講座


    「からくり技術」による現場のモノづくり強化[Ⅰ]
    石川雅道/(株)石川改善技術研究所
  • 会社探訪


    「進化する企業」をめざした生産・物流改善 -ホシザキ電機(株) 本社工場-
    レポーター 大森峻一/早稲田大学
  • コラム(75)

  • 協会ニュース

  • 私のすすめる本

  • 編集後記

特集の背景


最近の金融緩和策によって、円安が進み、国内輸出産業にとっては少なからず追い風が吹いている状況ですが、国内製造業を取り巻く環境の厳しさの根本的な解決まではほど遠いといえます。様々な環境変化は、追い風となる場合も逆風となる場合もありますが、その変化のなかにあっても、常に競争力を保っていることが、国内で製造を継続するためには必要です。設備を活かす技術・設備に活かす技術を各企業が持ち続けていくことは、この課題に応えるひとつの方策としてあげられます。

特集テーマのねらい


設備を使うことで人の手ではできない加工が可能になり、品質の良いものを効率的に生産できるなど、モノづくりにおいては設備に期待する効果は非常に大きいといえます。一方で設備自体や使い方などに問題があり、投資した金額の割に、期待通りの効果を発揮できないこともあります。本特集は、設備を使ったトータルとしての生産システムに期待通りの働きを求めるために、各社でどのような取り組みが行われているかを紹介いただくことが目的です。設備を活かす・設備に活かす内容として、
  • ・良い品質のものを造り続けるためのこだわりの活動
  • ・必要機能に絞ったシンプルで小型の安価な設備作り
  • ・内製化による技術蓄積と投資抑制
  • ・設備開発導入ステップの工夫による立ち上げリードタイム短縮と開発コスト削減
  • ・需要変動へ柔軟に対応するための工夫
  • ・設備をメンテナンスできる人材の育成
  • ・女子力の活用と新たな視点による設備改善の事例
などの取り組みを紹介していただきました。

記事について


  • 論壇


    今回の論壇は、「大量生産型設備からの脱皮――設備のシンプル化――」と題して、慶応義塾大学名誉教授の中村善太郎先生に執筆いただきました。大型設備・大量生産ラインが抱える問題点を指摘し、設備のシンプル化の進め方に焦点を当て、そのための仕事の捉え方、ものづくりの「要」を正しく把握することの重要性を説かれています。「素材を製品に変えること」のなかで、素材に製品の付加価値を与えているところを“ものづくりの「要」”と呼んでいます。そして、「要」をおさえるということは、ワークおよびそれに接触し作用するワークヘッドの良品条件を明らかにすることであるとしています。また、設備のシンプル化のためのアプローチとして、その「要」の原点構想案を見出してから、必要なものだけを付加する方法およびヘッドユニット化について提案され、事例を交えて解説していただきました。ヘッドユニット化により、設備のシンプル化、メンテナンス性向上などの様々な効果が得られ、設備革新が期待できるとしています。
  • ケース・スタディ


    • ①マルヤス工業の山田昌也氏に「ワークヘッドと良品条件からのもの造り」について執筆いただきました。同社では、TPM活動をベースにした「全員で良いものを造る活動」を展開していますが、そのなかから今回は特に、加工点に注目した活動について紹介いただきました。加工前後の「もの」の最小限度の変化を「基本変換」と呼び、シンプル・スリムな工程とするため、まず、この基本変換を正しく理解する。工法は、この基本変換を元に選定され、その製品をひとつだけ造るための「原点加工」を考える。また、ひとつの工程内の加工を「ステーション」と呼ばれる要素に細分化し、各ステーションのワークヘッドと良品条件の洗い出しを行うなど、良いものを造るための様々なこだわりについて紹介いただきました。ヘッドユニット、設備ユニットなどのユニット化はメンテナンス性も考慮されており、メンテナンスを「良いものを造り続ける活動」の中心に位置づけ、その方法についても詳しく記述いただきました。
    • ②ミツバの大井守氏、渡辺祐一氏、黒澤勝氏に「自主・自立・自前の設備製作活動推進」と題して、「安価に小型で使いやすく」をめざした設備の内製化の活動を中心に執筆いただきました。内製化に取り組み始めたころの苦労について述べていただき、その状況を脱するためにどんな取り組みを行ってきたか紹介していただきました。特に、外部業者に依頼していたブラックボックス部分が設備の調整・保全上の問題となり、これを解明する活動を継続的に行っています。外部に依存していたブラックボックスの解明が進むと、設備点検内容が高度化し、その対応のために「スキル道場」といった教育の場で設備と製品に強い人材育成を行っていることも紹介していただきました。また、シンプルで人に優しい内製ラインづくり、内製設備と購入設備のすみ分けによるコスト低減、汎用制御の内製設備が増えることによる保全情報集計管理上の効果などについても紹介されています。
    • ③旭化成ケミカルズの柳瑠里氏・田原ゆり氏・石川佳菜氏・辛山利恵氏に「T-501現場液面計指示異常の改善」と題して執筆いただきました。「自ら進んで行動する」という製造部の活動方針に基づき、ベンゼン製造用蒸留搭の液面計指示異常という問題の対策に、入社3~6年目の女性交代運転員が取り組んだ事例です。現状認識から、あるべき姿(目標)設定、原因追究、対策、効果の検証までの一連の活動について、具体的に、非常に詳細に紹介いただきました。長年放置されていてベテランの運転員のカンと経験では解決できなかった問題を、経験が浅く原因がなかなか見つからないといった状況であっても、あきらめずに現場を歩き、自分たちが運転する設備の問題を自ら解決したという事例です。現地、現物で見ることの大切さが、読み取れる事例です。
    • ④新日鐵住金の山田紀男氏に「磨け女子力! 新たな視点で現場力アップ!」と題して、女性社員の視点を設備・作業の改善に活かした活動と人材育成について紹介いただきました。女性社員も基本は男性社員と同様の育成を行うという人材育成プランのもと、今まで男性職場であったところに女性を進出させています。また、ベテランと新人女性を同じ活動サークルに入れるという編成を実施して、教育効果もねらった活動になっています。鋼板を巻いたコイルをとめるフープ(鉄製のバンド)取り扱い作業について、女性目線の気づきから調査を進めることで、男性にとっても負担の大きい作業であったことが判明し、様々な危険も浮き彫りになったことが紹介されています。要因分析や対策案などが具体的に詳細に紹介され、活動を通しての技術のスキルアップ、改善意欲向上についても述べられています。新しい視点によって、それまで気づかなかった問題に気づき、有効な改善に結びつくことが良くわかる内容になっています。
    • ⑤シチズン平和時計の川手芳成氏には、「治具化・機械化・ライン化」というタイトルで設備導入の考え方と進め方について執筆いただきました。設備を、「国内生産維持のために生産性を高め海外との人件費差を相殺する手段」として明確に位置づけています。「マイクロ化」をキーワードに、省エネ、省スペースの設備づくりへのチャレンジを続けています。そして精密組み立てを行う時計設備では、「小さい部品を組み立てる設備は小さい!」がスローガンとなったことが紹介されています。組み立ての難易度に比例して装置価格が高くなるという問題に対して、まずはポイントとなる部分の簡易治具を製作し、高価なロボットではなく人手で作業する。手作業を通じて重要ポイントを見極めた後、さらに効率的な装置を導入する。このようなステップを踏むことが、設備開発の長期化を防止し、コスト低減に有効であると事例を交え解説しています。また、数量変動に対応するため、工程分割と段階的な設備導入を行ってきた事例についても紹介いただきました。

おわりに


本特集を通じ、設備は設備として単独に存在できるのではなく、それに関わる生産のやり方と非常に密接につながっており、使い方・運用方法にあわせた設備づくりの工夫・設備運用上の工夫が非常に重要であると改めて感じました。そう考えると、海外に同じ設備を持ち込んだだけでは国内と同じ効果を発揮することは難しく、設備を活かす、設備に活かす技術の優位性は、そのまま国内でのモノづくりの優位性につながるといえそうです。本号の特集記事が、設備を活かす活動と、それによる国内でのモノづくりの競争力維持・強化を図る活動の参考になれば幸いです。
戸田 隆幸/企画担当編集委員

【論壇】大量生産型設備からの脱皮


今回の論壇は、「大量生産型設備からの脱皮――設備のシンプル化――」と題して、慶応義塾大学名誉教授の中村善太郎先生に執筆いただきました。大型設備・大量生産ラインが抱える問題点を指摘し、設備のシンプル化の進め方に焦点を当て、そのための仕事の捉え方、ものづくりの「要」を正しく把握することの重要性を説かれています。「素材を製品に変えること」のなかで、素材に製品の付加価値を与えているところを“ものづくりの「要」”と呼んでいます。そして、「要」をおさえるということは、ワークおよびそれに接触し作用するワークヘッドの良品条件を明らかにすることであるとしています。また、設備のシンプル化のためのアプローチとして、その「要」の原点構想案を見出してから、必要なものだけを付加する方法およびヘッドユニット化について提案され、事例を交えて解説していただきました。ヘッドユニット化により、設備のシンプル化、メンテナンス性向上などの様々な効果が得られ、設備革新が期待できるとしています。

【ケース・スタディ】ワークヘッドと良品条件からのもの造り


マルヤス工業の山田昌也氏に「ワークヘッドと良品条件からのもの造り」について執筆いただきました。同社では、TPM活動をベースにした「全員で良いものを造る活動」を展開していますが、そのなかから今回は特に、加工点に注目した活動について紹介いただきました。加工前後の「もの」の最小限度の変化を「基本変換」と呼び、シンプル・スリムな工程とするため、まず、この基本変換を正しく理解する。工法は、この基本変換を元に選定され、その製品をひとつだけ造るための「原点加工」を考える。また、ひとつの工程内の加工を「ステーション」と呼ばれる要素に細分化し、各ステーションのワークヘッドと良品条件の洗い出しを行うなど、良いものを造るための様々なこだわりについて紹介いただきました。ヘッドユニット、設備ユニットなどのユニット化はメンテナンス性も考慮されており、メンテナンスを「良いものを造り続ける活動」の中心に位置づけ、その方法についても詳しく記述いただきました。

【ケース・スタディ】自主・自立・自前の設備製作活動推進


ミツバの大井守氏、渡辺祐一氏、黒澤勝氏に「自主・自立・自前の設備製作活動推進」と題して、「安価に小型で使いやすく」をめざした設備の内製化の活動を中心に執筆いただきました。内製化に取り組み始めたころの苦労について述べていただき、その状況を脱するためにどんな取り組みを行ってきたか紹介していただきました。特に、外部業者に依頼していたブラックボックス部分が設備の調整・保全上の問題となり、これを解明する活動を継続的に行っています。外部に依存していたブラックボックスの解明が進むと、設備点検内容が高度化し、その対応のために「スキル道場」といった教育の場で設備と製品に強い人材育成を行っていることも紹介していただきました。また、シンプルで人に優しい内製ラインづくり、内製設備と購入設備のすみ分けによるコスト低減、汎用制御の内製設備が増えることによる保全情報集計管理上の効果などについても紹介されています。

【ケース・スタディ】T-501現場液面計指示異常の改善


旭化成ケミカルズの柳瑠里氏・田原ゆり氏・石川佳菜氏・辛山利恵氏に「T-501現場液面計指示異常の改善」と題して執筆いただきました。「自ら進んで行動する」という製造部の活動方針に基づき、ベンゼン製造用蒸留搭の液面計指示異常という問題の対策に、入社3~6年目の女性交代運転員が取り組んだ事例です。現状認識から、あるべき姿(目標)設定、原因追究、対策、効果の検証までの一連の活動について、具体的に、非常に詳細に紹介いただきました。長年放置されていてベテランの運転員のカンと経験では解決できなかった問題を、経験が浅く原因がなかなか見つからないといった状況であっても、あきらめずに現場を歩き、自分たちが運転する設備の問題を自ら解決したという事例です。現地、現物で見ることの大切さが、読み取れる事例です。

【ケース・スタディ】磨け女子力! 新たな視点で現場力アップ!


新日鐵住金の山田紀男氏に「磨け女子力! 新たな視点で現場力アップ!」と題して、女性社員の視点を設備・作業の改善に活かした活動と人材育成について紹介いただきました。女性社員も基本は男性社員と同様の育成を行うという人材育成プランのもと、今まで男性職場であったところに女性を進出させています。また、ベテランと新人女性を同じ活動サークルに入れるという編成を実施して、教育効果もねらった活動になっています。鋼板を巻いたコイルをとめるフープ(鉄製のバンド)取り扱い作業について、女性目線の気づきから調査を進めることで、男性にとっても負担の大きい作業であったことが判明し、様々な危険も浮き彫りになったことが紹介されています。要因分析や対策案などが具体的に詳細に紹介され、活動を通しての技術のスキルアップ、改善意欲向上についても述べられています。新しい視点によって、それまで気づかなかった問題に気づき、有効な改善に結びつくことが良くわかる内容になっています。

【ケース・スタディ】治具化・機械化・ライン化


シチズン平和時計の川手芳成氏には、「治具化・機械化・ライン化」というタイトルで設備導入の考え方と進め方について執筆いただきました。設備を、「国内生産維持のために生産性を高め海外との人件費差を相殺する手段」として明確に位置づけています。「マイクロ化」をキーワードに、省エネ、省スペースの設備づくりへのチャレンジを続けています。そして精密組み立てを行う時計設備では、「小さい部品を組み立てる設備は小さい!」がスローガンとなったことが紹介されています。組み立ての難易度に比例して装置価格が高くなるという問題に対して、まずはポイントとなる部分の簡易治具を製作し、高価なロボットではなく人手で作業する。手作業を通じて重要ポイントを見極めた後、さらに効率的な装置を導入する。このようなステップを踏むことが、設備開発の長期化を防止し、コスト低減に有効であると事例を交え解説しています。また、数量変動に対応するため、工程分割と段階的な設備導入を行ってきた事例についても紹介いただきました。