IE とロボットの融合を考える


2018年10月 307号発行:2018年10月1日
  • 巻頭言


    グローバルのモノづくりパフォーマンス向上に貢献するIEであり続けたい
    坂本秀行/日本IE協会会長・日産自動車(株)
  • 特集テーマのねらい(特集記事)


    IEとロボットの融合を考える
    江頭誠/企画担当編集委員
  • 論説(特集記事)


    ロボット産業におけるシステムインテグレーション
    小平紀生/(一社)日本ロボット工業会
    概要
  • ケース・スタディ(特集記事)


    モノづくりにおけるIT(IoT)活用
    石田宣浩 石田俊樹/日立アプライアンス(株)
    概要
  • 連載講座


    ものづくりにおけるプロジェクトマネジメントの手引書[Ⅳ]
    任田典平 児山豊 杉山智裕/NPO法人科学技術者フォーラム
  • 連載講座


    ものづくり生産現場の社会生産性[III]
    野渡正博/玉川大学・GITD Institute
  • 会社探訪


    IoTの活用による競争力の向上 - (株)新井精密 -
    レポーター 市来嵜治/慶應義塾大学
  • レポート


    第59回 全国IE年次⼤会レポート
    中嶋良介/成蹊大学・電気通信大学
  • レポート


    第3回 産学連携研究交流会(分科会2)「ダイバーシティ/働き⽅改革」開催
    レポート 神宮貴子/共愛学園前橋国際大学
  • コラム(102)

  • 協会ニュース

  • 私のすすめる本

  • 連携団体法人会員一覧

  • 編集後記

特集の背景


国際ロボット連盟(IFR)の調査によると、2016年末時点では、世界で約180万台の産業用ロボットが活躍中である。市場規模は急成長中であり、2020年末には300万台を超えると予測される。自動車産業や電気・電子産業での導入が多く、またアジアでの購入の伸びが大きい。生産性の向上、労働力不足への対応、省人化への取り組み、製品のQCD向上などに、産業用ロボットの導入が有効な手段であることを読み取ることができる。本特集では、ロボットの導入を予定している企業の参考となるように、製造業における既導入事例から、導入のための留意点を抽出する。ライン設計コンセプト、製品の流し方、部品供給方法、作業・動作分析、作業者・ロボット・専用機間の作業機能分担、ラインレイアウト、生産管理システムとの連動、各目標の数値化、コストパフォーマンス、メンテナンス体制、安全管理など、ロボットを含む高度自動化システムの仕様検討項目を明確にし、設計・導入を円滑に進めるためには、IE的視点や分析に基づくアプローチが有効であることを今回確認していく。

特集の着眼点


ロボットを含む自動化システムの設計には、システムの構成要素を統合化するシステムインテグレータの存在が必要となる。本特集号では、このシステムインテグレータの活動の重要性に着目した。自動化システムの規模や複雑さにもよるが、導入に際して、メーカーとユーザーの間にシステムインテグレータが入る場合がある。2012年頃より、システムインテグレータの必要性が明文化されてきたが、その主な役割は、ロボットを含む生産システムの要求仕様の明確化と構築・実現である。もちろん、ユーザーやメーカーがシステムインテグレーションを担う場合もある。システム導入費用削減を考慮した場合、生産システムの構成要素である4M+Iを熟知しており、かつシステムの全体最適を把握できるユーザー側のIEエンジニアがインテグレータを務めることが、望ましい形の1つとして考えられる。簡単には、インテグレータのノウハウ習得は果たせないと思うが、今後、IEエンジニアがその職域を広げ、もう一段高いレベルへ成長するためにも意識しておきたい業務であり、今回注目していきたい。

記事構成


  • 論説


    日本ロボット工業会のシステムエンジニアリング部会長である三菱電機の小平紀生氏より、“ロボット産業におけるシステムインテグレーション”について解説いただき、次のような知見を得ることできた。
    • ・ロボットを含めた自動化システムの設計と立ち上げには、システムを取りまとめるシステムインテグレータの存在が重要。日本はロボット用途開拓面でも先進国であり、様々な用途への適用は常に日本がリードしてきた。これを支えているのは、産業用ロボットの応用技術に熟達した日本のシステムインテグレータである。
    • ・産業用ロボットは半完結製品であり、その味付けはシステムインテグレータの腕前次第。
    • ・生産設備としての価値は、システムインテグレーションされた結果で確定するもので、使用するロボットの機能性能ではない。同じロボットを使っていても、システムインテグレーション技術の良し悪しによって、生産設備のパフォーマンスは大きく左右される。
    • ・システムインテグレーションにおける重要な職務の1つとしてシステムの安全性確保が挙げられる。最近はすべての機械製品事業においてリスクアセスメントの実施と製品出荷時の残留リスクの提示が、努力義務化されている。今後はロボットシステムインテグレーションにおいて、エンドユーザとシステムインテグレータ間で安全仕様に関する合意形成が重要な項目となる。
  • ケース・スタディ


    ①日立アプライアンスの石田宣浩氏・石田俊樹氏からは,“モノづくりにおけるIT(IoT)活用~セルを中心とした「見える化・つながる化・脱属人化」のIoT改革~”について執筆いただいた。同社では、セル生産方式とフローショップ化による製造リードタイムの短縮、製造コスト低減をめざす活動を続けてきたが、IoTの活用により改善を加速させている。多種多様の製品の生産量増減に柔軟に対応するためのセル生産は、作業時間の低減が頭打ちの状態であるが、さらなる改善をめざし、徹底的にムダな動きを取り払い、その後、人作業との組み合わせが可能となる協働型ロボットを活用したロボットセル化を図り、これらのセルを近接化・直結化しフローショップ化を進めている。また、同社多賀事業所では、「見える化・つながる化・脱属人化」をキーワードとした改善活動を進めており、これらの考え方をIoTなどのデジタル技術で実現する新しいものづくり強化をめざしているが、そのためには大前提として従来からのIE的見地をベースとした改善活動の考え方が継続的に取り組まれることが重要であり、徹底したムダ取りという基本的な考え方が確保されてからはじめてIoTの活用効果が生み出されるというIE的アプローチの重要性について言及いただいた。

おわりに


論説からはシステムインテグレーションの重要性について、また、ケース・スタディからはIE的アプローチが、ロボットを含めた自動化システム設計にとっても、製造IoT化を進めるに場合にも、必要不可欠な手法であることを再認識させていただき、感謝申し上げたい。本特集号が読者の皆様にとって、さらに一段上の生産システム設計技術をめざし、モノづくりにおける価値向上に取り組むためのヒントとなれば幸いである。なお、今回は製造業を中心としたケース・スタディを取り上げたが、今後の同様の特集では、サービス業など非製造業におけるロボットの活用状況についても紹介できればと考える次第である。
企画担当編集委員/江頭 誠

【論説】ロボット産業におけるシステムインテグレーション


日本ロボット工業会のシステムエンジニアリング部会長である三菱電機の小平紀生氏より、“ロボット産業におけるシステムインテグレーション”について解説いただき、次のような知見を得ることできた。
  • ・ロボットを含めた自動化システムの設計と立ち上げには、システムを取りまとめるシステムインテグレータの存在が重要。日本はロボット用途開拓面でも先進国であり、様々な用途への適用は常に日本がリードしてきた。これを支えているのは、産業用ロボットの応用技術に熟達した日本のシステムインテグレータである。
  • ・産業用ロボットは半完結製品であり、その味付けはシステムインテグレータの腕前次第。
  • ・生産設備としての価値は、システムインテグレーションされた結果で確定するもので、使用するロボットの機能性能ではない。同じロボットを使っていても、システムインテグレーション技術の良し悪しによって、生産設備のパフォーマンスは大きく左右される。
  • ・システムインテグレーションにおける重要な職務の1つとしてシステムの安全性確保が挙げられる。最近はすべての機械製品事業においてリスクアセスメントの実施と製品出荷時の残留リスクの提示が、努力義務化されている。今後はロボットシステムインテグレーションにおいて、エンドユーザとシステムインテグレータ間で安全仕様に関する合意形成が重要な項目となる。

【ケース・スタディ】モノづくりにおけるIT(IoT)活用


日立アプライアンスの石田宣浩氏・石田俊樹氏からは,“モノづくりにおけるIT(IoT)活用~セルを中心とした「見える化・つながる化・脱属人化」のIoT改革~”について執筆いただいた。同社では、セル生産方式とフローショップ化による製造リードタイムの短縮、製造コスト低減をめざす活動を続けてきたが、IoTの活用により改善を加速させている。多種多様の製品の生産量増減に柔軟に対応するためのセル生産は、作業時間の低減が頭打ちの状態であるが、さらなる改善をめざし、徹底的にムダな動きを取り払い、その後、人作業との組み合わせが可能となる協働型ロボットを活用したロボットセル化を図り、これらのセルを近接化・直結化しフローショップ化を進めている。また、同社多賀事業所では、「見える化・つながる化・脱属人化」をキーワードとした改善活動を進めており、これらの考え方をIoTなどのデジタル技術で実現する新しいものづくり強化をめざしているが、そのためには大前提として従来からのIE的見地をベースとした改善活動の考え方が継続的に取り組まれることが重要であり、徹底したムダ取りという基本的な考え方が確保されてからはじめてIoTの活用効果が生み出されるというIE的アプローチの重要性について言及いただいた。