現場と技術の連携を再考する
2026年3月 / 342号 / 発行:2026年3月15日
目次

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巻頭言
人とテクノロジーの協働による価値創造
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2026年度の特集テーマについて
2026年度の特集テーマについて
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特集テーマのねらい(特集記事)
現場と技術の連携を再考する
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論壇(特集記事)
現場と技術の連携を再考する
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ケース・スタディ(特集記事)
製造現場と生産技術部門の連携から生まれたIEの活用と新たな工程設計
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ケース・スタディ(特集記事)
KPS改善活動の継続としんか
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ケース・スタディ(特集記事)
One Team with DiversityによりInnovation & Operational Excellenceを実現するIE
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ケース・スタディ(特集記事)
個別受注だからこそ、モジュラーデザインでエンジニアリング・チェーン革新
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ケース・スタディ(特集記事)
地域創生を生み出す、和紙開発活動
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プリズム(特集記事)
モジュラーデザインの役割と製品構造・工程の改革の進め方
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プリズム(特集記事)
生成AI時代における設計・開発プロセス改革
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会社探訪
3次元設計図面を出発点にした全社的デジタル技術活用への取り組み-(株)日東電機製作所-
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現場改善
「現場が疲弊する改善」から「感謝が飛び交う改善」へ
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連載「モノづくり現場でキラリと輝く女性たち」
改善活動を継続する秘訣は「気づき」を口に出しやすい職場づくり
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レポート
「本物のものづくり」について考える
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コラム(137)
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協会ニュース
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連携団体法人会員一覧
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編集後記
特集テーマのねらい
製造業の活動には、大きく分けて「固有技術」と「管理技術」という2つの側面が必要であると言われている。自社が持つ固有技術を発展・深化させ、それを事業として成立させ価値を生み出すためには、管理技術が欠かせない。
管理技術の1つであるIEは、現場の実状と生産性向上の観点から、企業が利益を生み出すための技術の方向性を示す。例えばヘンリー・フォードは、「誰もが乗れる自動車」というニーズを捉え、流れ作業による大量生産方式を実現した。これは、IEの発想が新しいモノづくり技術・仕組みを生み出した代表例である。本特集では、企業を取り巻く環境が大きく変化し、IT技術が急速に発達するなかで、IEが技術を生み出す役割を果たし得るのかについて再考することをねらいとしている。なお、本特集で扱う「技術」とは、新商品の機能を向上させるための固有技術ではなく、製造現場のQCDを向上させる「モノづくり技術」に限定する。モノづくり技術には、工程や設備開発に加え、ITを活用した測定技術や新たなIE技術なども含めることとする。
一般に、モノづくり技術は、企画―開発・設計―生産技術―製造という流れ(エンジニアリングチェーン)から生み出されると考えられている。本特集では、さらに現場からも新しいモノづくり技術が生まれるととらえ、記事を集めている。なぜなら、現場を取り巻く環境は変化が激しく、製品が複雑化しているからである。さらに、新製品ごとにラインを立ち上げるだけでなく、既存ラインを活用して新製品を立ち上げる機会も増えている。このような状況下では、現場が生産技術部門などと連携することで、新たな技術が生まれる可能性があると考えられる。
記事構成
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論壇
本誌のケース・スタディを寄稿いただいたKOAの内川洋一氏、AGCの水町忠弘氏、マックスの吉田信太郎氏と、編集委員長である慶應義塾大学の河野宏和氏、本企画担当編集委員のPLP研究所の篠田心治により、特集テーマの意味合いについて座談会で討論し、そこでの発言内容とケース・スタディ記事の内容を参照しながら、本号の論壇としての主張をまとめた。
そこでは、現代において「固有技術」を発展・進化させるための「管理技術」の役割が考察されている。具体的には、サプライチェーンで生み出される技術力を「SC改善力」、エンジニアリングチェーンで生み出される技術力を「EC技術力」と呼び区別し、それぞれの技術力が意味する内容や、どのような新しい技術が生み出されているか、その背景にある考え方や視点、さらにそうした視点を持つ人材の育成方法についてまとめられている。
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ケース・スタディ
- ①マックスの吉田信太郎氏に「製造現場と生産技術部門の連携から生まれたIEの活用と新たな工程設計」と題して執筆いただいた。本稿では、多品種生産への移行が進む中で、製造現場に生産技術部門が入り込んで大きな成果を上げた2つの事例について、取り組みの考え方も含めて紹介いただいた。1つ目の加工職場の事例では、予実管理を確実なものとするため、作業者の付帯作業を詳細にとらえ、それらを含めたデジタルツインにつながる生産工場シミュレーターを構築している。2つ目の組立職場におけるばらつき削減では、削減の論理を明確にし、理論的にばらつきを改善している。さらに、これらの取り組みをエンジニアリングチェーンに展開した内容も紹介いただいた。
- ②KOAの内川洋一氏に「KPS改善活動の継続としんか~市場の変化に対応したKOA の挑戦~」と題して執筆いただいた。経営環境の変化に対応するためのKPS(KOA Profit System)改善活動について、利益体質の強化と経営コストの効率化をめざしたKPS-1から、「お客様にご指名いただける会社」をめざすKPS-2、「共創できる研究開発型企業」をめざすKPS-3というフェーズに分けて、活動のねらいと考え方を紹介していただいた。各フェーズは、直前のフェーズを着実にやり切り、前段階を土台として次のフェーズに進められている。また、分業のムダに着目し、1人のショップ長に責任と権限を与え、受注~材料調達~生産~出荷~売上処理までのすべてのフローを担当させ、品質管理、納期管理、利益管理に加え、安全衛生や労務管理までの責任を負う自己完結型の組織であるワークショップを紹介いただいた。さらに、特徴的なからくり設備や人財育成についても紹介いただいた。
- ③AGCの水町忠弘氏に「One Team with DiversityによりInnovation & Operational Excellence を実現するIE」と題して執筆いただいた。2006年より、IEを軸とした科学的手法を用いたAGCグループの改善革新活動について紹介していただいた。固有技術と管理技術は経営の両輪であり、異なる視点や意見を尊重し、多様な能力や個性を活かして新たな技術を生み出す本社IE部門の機能と、改善人材育成と連動した改善文化の特徴について述べられている。さらに、製造現場に生産技術・品質部門・IE&DX部門などがOne Teamとして入り込み、Innovation & Operational Excellenceを生み出す事例も紹介いただいた。
- ④モジュラーデザイン研究会の大塚泰雄氏に「個別受注だからこそ、モジュラーデザインでエンジニアリング・チェーン革新~総論賛成、各論反対にならないための各部門からの提案の重要性~」と題して執筆いただいた。ある中型回転機を製造するメーカーにおいて、個別受注の少ロット生産に対しモジュラーデザインを適用し、開発設計部門でいかに設計負荷を低減したか、またそれを受けた生産部門での効果について事例を紹介いただいた。現状と改善ポイント、めざす姿にはじまり、モジュラーデザインによる設計・製造改革の進め方が具体的に分かりやすく述べられている。
- ⑤寿精版印刷の久保拓也氏に「地域創生を生み出す、和紙開発活動~「4つのお客様」から現場と技術の連携を中心として~」と題して執筆いただいた。印刷というモノにこだわることなく、お客様企業の新たな価値をデザインし、様々な課題を解決するマーケティングサポートによりコア技術を高め、新商品を開発した事例を紹介いただいた。お客様キーマンの課題解決のために「4つのお客様」を定義し、利益の見える化を行っている。さらに、お客様キーマンの意思決定スピードに対応するため、「スピード(1/3の試作納期)+精度(3倍のサンプル提出)」を強みと定義している。これらの特徴と強みにより、社会課題の解決という視点も含めたちぎり和紙ラベルの開発、川上工程との垂直統合による高付加価値な混抄和紙ラベルの量産化、産学共同によるパルプ化研究と量産化といった事例とその成果について紹介いただいた。
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プリズム
- ①モジュラーデザイン研究会の大塚泰雄氏に「モジュラーデザインの役割と製品構造・工程の改革の進め方」と題して執筆いただいた。モジュラーデザインの手段として、設計手順を標準化し、あるべき設計手順を追求して設計リードタイム(LT)の短縮をめざす「設計手順標準化」と、顧客要求の品揃えを損なわずに部品種類を削減する「部品構造モジュール化」について紹介いただいた。さらに、開発設計部門で行うモジュラーデザインと、生産技術部門で行う生産モジュール化の違いについても紹介いただいた。
- ②Smart Processの西岡良太氏と片山和子氏に「生成AI時代における設計・開発プロセス改革~CES2026からの示唆~」と題して執筆いただいた。ライフサイクル全体で価値を提供し続けるプラットフォームへの移行や、品質、コスト競争力を担保した上での短期開発のへの取り組みが必須になる中、企画・設計・生産技術・製造の各工程が分断されている従来のプロセスの見直しを進めている。業務プロセスの暗黙知の形式知化やMBSE(Model-Based Systems Engineering)、生成AIを活用した業務支援ツールの開発、CES2026に見る生成AIとエンジニアリングの進化についても紹介いただいた。
おわりに
本特集を通して、IE的な視点は、エンジニアリングチェーンに限らず現場発信のサプライチェーンにおいても、モノづくり技術を進化することに貢献していると感じた。IEが益々発展することを願っている。
【論壇】現場と技術の連携を再考する
本誌のケース・スタディを寄稿いただいたKOAの内川洋一氏、AGCの水町忠弘氏、マックスの吉田信太郎氏と、編集委員長である慶應義塾大学の河野宏和氏、本企画担当編集委員のPLP研究所の篠田心治により、特集テーマの意味合いについて座談会で討論し、そこでの発言内容とケース・スタディ記事の内容を参照しながら、本号の論壇としての主張をまとめた。
そこでは、現代において「固有技術」を発展・進化させるための「管理技術」の役割が考察されている。具体的には、サプライチェーンで生み出される技術力を「SC改善力」、エンジニアリングチェーンで生み出される技術力を「EC技術力」と呼び区別し、それぞれの技術力が意味する内容や、どのような新しい技術が生み出されているか、その背景にある考え方や視点、さらにそうした視点を持つ人材の育成方法についてまとめられている。