明るく楽しい改善文化を育む
2026年9月 / 344号 / 発行:2026年9月15日
目次

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巻頭言
DXとモノづくりの融合がもたらす「楽しむ改善」の新時代
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特集テーマのねらい(特集記事)
明るく楽しい改善文化を育む
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論壇(特集記事)
いつもの改善活動が、ワクワクと挑戦が生まれるプロジェクトになる瞬間
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ケース・スタディ(特集記事)
工場内置場~屋外ヤード間 スラブ鋼片輸送 総合対策
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ケース・スタディ(特集記事)
ロボットを活用した日本のものづくりの将来
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ケース・スタディ(特集記事)
選ばれる中小企業になるために改善を「義務」から「喜び」へと転換する組織づくり
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会社探訪
製造本部によるTPW活動の改善取り組み報告会と工場レポート-(株)戸上電機製作所-
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現場改善
不定形耐火物プレキャストブロックの時間生産性向上
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レポート
第67回 全国IE年次大会
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協会ニュース
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連携団体法人会員一覧
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編集後記
特集テーマのねらい
製造業を取り巻く環境は大きく変化している。少子高齢化による人手不足、熟練技能者の高齢化、価値観の多様化に加え、AIやロボットをはじめとするデジタル技術の進展により、現場にはこれまで以上に柔軟な対応力が求められている。その一方で、改善活動は日本の製造業が長年培ってきた競争力の源泉であり続けている。現場を観察し、課題を発見し、知恵を出し合い、試行錯誤を重ねながらより良い方法を作り上げる。この地道な積み重ねが品質、生産性、コスト競争力を支えてきた。
しかし近年、改善活動そのものが形骸化してしまうケースも少なくない。改善提案を出すこと、会議を開催すること、活動件数を達成することが目的となり、本来の学びや挑戦の機会が失われることがある。改善活動が「やらされる活動」となった瞬間に、現場の主体性は徐々に失われ、改善文化は弱体化していく。
一方で、本来の改善活動には人を成長させる力がある。自ら課題を見つけ、仲間と議論し、成果を実感する過程には大きな達成感がある。自分たちの工夫によって現場や顧客に価値を提供できたという実感は、働きがいにもつながる。今後の製造業に求められるのは、改善を業務として管理することではなく、改善を文化として根づかせることである。
また、ロボットやデジタル技術の普及が進む中であっても、改善活動の主体はあくまで人である。技術は人に代わる存在ではなく、人の能力を拡張し、改善を支える手段として活用されるべきものである。優れた技術を導入しても、現場に主体性や挑戦する風土がなければ十分な成果は得られない。
本特集では「現場改善を楽しむ」をテーマに、人・組織・IE・技術活用という多様な視点から改善文化について考察する。共通しているのは、改善を前向きな挑戦としてとらえ、自ら考え行動する人を中心に据えている点である。改善を楽しむとは決して楽をすることではない。困難な課題と向き合いながらも、成長や成果を実感し、次の挑戦へつなげることである。
多くの企業でDXやAI、ロボット活用への期待が高まっている。しかし、それらの技術は導入すること自体が目的ではなく、現場課題を解決するための手段であることを忘れてはならない。実際に優れた成果を上げている企業を見てみると、共通しているのは技術の先進性だけではなく、現場で働く人々が主体的に課題を発見し、改善に取り組もうとする風土を持っていることである。
改善活動の原点は、人が現場を見て考えることである。そこに仲間との対話が加わり、新たな気づきや挑戦が生まれる。そして、その挑戦が成果につながった時に「次もやってみよう」という前向きな循環が形成される。この循環こそが改善文化の本質ではないだろうか。
人手不足や市場環境の変化が進むこれからの時代において、企業の競争力を支えるのは設備や技術だけではない。それらを活かしながら継続的に改善を生み出す人と組織の力である。本特集で紹介する事例は、その実践のあり方こそ異なるものの、「人が主体となって改善を生み出している」という点で共通している。
記事構成
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論壇
リプロキャリアの平陽子氏には、「いつもの改善活動が、ワクワクと挑戦が生まれるプロジェクトになる瞬間~チームワークから考える、改善文化の育み方~」と題して執筆いただいた。
本稿では、改善活動がうまく機能する組織とそうでない組織の違いを、改善手法そのものではなくチームワークや対話の観点から考察している。
特に、改善活動を「ワクワクする活動」と「お付き合いの活動」に分け、その違いが共通目標の共有、挑戦できる環境、そして当事者意識の有無にあることを示している点は示唆に富む。さらに、チームコーチングの考え方を用いて、人ではなく構造を見るという視点から組織課題をとらえ直している。
A社、B社の事例では、外部環境や内的役割といった見えにくい要素がチームワークに大きく影響していることが示されており、改善文化を育むためには手法だけでなく関係性や対話の質にも目を向ける必要があることを教えてくれる。改善活動を推進する立場の読者にとって、多くの気づきを与える内容となっている。
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ケース・スタディ
- ①日本製鉄の森崚太氏には、「工場内置場~屋外ヤード間 スラブ鋼片輸送 総合対策」と題して執筆いただいた。本稿は、セルフタイムスタディによる実態把握を起点とし、輸送・荷役作業に潜むムダを徹底的に分析した、まさにIEの王道ともいえる改善事例である。トレーラー輸送における待ち時間や配車のムラを定量的に把握した上で、運用ルールの見直しやモバイル端末の活用による情報共有を進め、さらに屋外ヤードを含めた全体最適へと改善の視点を広げている。改善効果として大幅な配車台数削減とコスト低減を実現しており、その成果もさることながら、現状把握から課題抽出、改善策立案、効果検証へとつながるIEの基本プロセスを愚直に実践している点が大きな価値である。デジタル技術が進展する時代においても、事実を観察しデータで判断するIEの本質は変わらないことを改めて認識させる内容となっている。
- ②髙丸工業の髙丸正氏には、「ロボットを活用した日本のものづくりの将来」と題して執筆いただいた。本稿は単なるロボット導入事例ではない。ロボットを「多品種少量生産における省力化装置」と位置づけ、人手不足や技能継承という日本の製造業が直面する課題に対する実践的な解決策を提示している。中小企業におけるロボット導入効果として、人手不足対応のみならず、人材育成や社員意識の変化、ノウハウの蓄積など多面的な価値を示している点が興味深い。また、一次産業分野への展開や遠隔操作技術の活用、在宅溶接など従来の常識を超えた取り組みも紹介されている。ロボットは人を排除するための技術ではなく、人の可能性を広げるための技術であるという著者の一貫したメッセージは、これからの現場改善を考える上で重要な示唆を与えている。
- ③新和メッキ工業の瀧見直晃氏には、「選ばれる中小企業になるために改善を『義務』から『喜び』へと転換する組織づくり」というテーマで取材させていただいた。本稿は、本特集テーマを最も象徴する事例といえる。地方の中小企業でありながら、補助金活用、新商品開発、海外企業との共同開発など果敢な挑戦を続ける背景には、改善を楽しむ組織文化が存在している。同社では形式的な朝礼や活動を廃止し、LINE WORKSを活用した情報共有と迅速なフィードバック文化を構築している。また、不具合や失敗を隠さず共有し、その行動を称賛する風土をつくることで、社員の主体性を引き出している。さらに、顧客との透明性の高いコミュニケーションや自社ブランド開発への挑戦は、改善活動が単なる効率化ではなく企業価値向上へつながることを示している。改善を続けるためには制度や仕組みだけでなく、人が成長したいと思える文化や環境が重要であることを教えてくれる事例である。
おわりに
本特集を通して改めて感じられるのは、改善活動の主役は人であるということである。チームワークを高めることも、IE手法を活用することも、ロボットを導入することも、その目的は人が力を発揮し価値を創出できる環境を整えることである。
改善文化は一朝一夕に形成されるものではない。現場をより良くしたいという想いを共有し、小さな成功体験を積み重ね、挑戦を称賛する風土を育むことで、少しずつ組織に定着していく。そして、その積み重ねが企業の競争力、人材育成、働きがいへとつながっていく。
変化の激しい時代だからこそ、改善活動の重要性はますます高まっている。本特集で紹介した取り組みは業種や規模こそ異なるものの、いずれも改善を前向きな挑戦としてとらえている点で共通している。本特集が読者の皆様にとって、改善活動の原点を見つめ直し、自職場における「明るく楽しい改善文化」を考えるきっかけとなれば幸いである。
【論壇】いつもの改善活動が、ワクワクと挑戦が生まれるプロジェクトになる瞬間
リプロキャリアの平陽子氏には、「いつもの改善活動が、ワクワクと挑戦が生まれるプロジェクトになる瞬間~チームワークから考える、改善文化の育み方~」と題して執筆いただいた。
本稿では、改善活動がうまく機能する組織とそうでない組織の違いを、改善手法そのものではなくチームワークや対話の観点から考察している。
特に、改善活動を「ワクワクする活動」と「お付き合いの活動」に分け、その違いが共通目標の共有、挑戦できる環境、そして当事者意識の有無にあることを示している点は示唆に富む。さらに、チームコーチングの考え方を用いて、人ではなく構造を見るという視点から組織課題をとらえ直している。
A社、B社の事例では、外部環境や内的役割といった見えにくい要素がチームワークに大きく影響していることが示されており、改善文化を育むためには手法だけでなく関係性や対話の質にも目を向ける必要があることを教えてくれる。改善活動を推進する立場の読者にとって、多くの気づきを与える内容となっている。